Handshake

時代とともに変化する握手の意味

世界平和を期待させた握手

ハリー・S・トルーマン
&
ウィンストン・チャーチル
&
ジョセフ・スターリン

Text Anastasia Davydova Lewis
Collages Patrick Waugh

1945年、アメリカ大統領のハリー・トルーマンとイギリスの宰相ウィンストン・チャーチルとソビエトの指導者であるヨシフ・スターリンがポツダム会議で顔を合わせた。この会議はナチス政権崩壊後のヨーロッパを立て直すための歴史的会合である。7月17日に行われたこの会合ではもちろんたくさん写真が撮られ、報道されている。そんな写真の中に、3人が一緒に立ち上がりカメラに向かってポーズをする写真がある。チャーチルはスターリンを悪魔のような利己主義者と揶揄し、またトルーマンは隠し持っていた核兵器がちゃんと作動するかをチェックしたがためにこの会議に遅刻した。そんな3名が肩を並べて一緒に笑っているのだ。左下に7月17日という日付がついた写真は、トルーマンが真ん中に立ち、チャーチルとスターリンの手を握っている。そのほかの写真を見ていくと、トルーマンが右から左へと目線を動かしているのが分かる。まるで白鳥の湖を踊る子どものバレーダンサーが窮屈に感じ、左右との距離感を測るように。このときの3人が握手する写真は、世界中の人たちに、彼らのように手をつなぐことで世界平和が訪れるという啓蒙を促した。しかしトルーマン、チャーチルとスターリンが揃って顔を合わせたのは1945年7月17日のたった1日だけ。そして3人にとって、世界平和を感じた最初で最後の瞬間だったはずだ。第二次世界大戦後に起こった出来事として、昔の地理の教科書にも使われるほど、この3名が握手をする姿はいろいろなメディアで取り上げられ、私たちの脳の片隅にある。

※PARTNERS Issue #1より抜粋した記事になります