2016年春。フェイスブックのリサーチチームは、全ての人や物事は6ステップ以内でつながっており、友達の友達、またその友達というのを介していけば、世界中の人々と間接的な知り合いになることができるという「6次の隔たり」(Six Degree of Separation)という仮説が現在も適用されるのかを調査した。この「6次の隔たり」は、“6回の握手”とも呼ばれ、ひとつの単位を握手に置き換えたものである。しかし、握手という単位を使わずに世界とのつながりを図った場合、その単位の持つ親密性によって隔たりは近くなったり、遠くなったりする。もし、単位をキスにしたらどうなるだろう? メールだったら? 苗字は分からないけど、名前だけなら分かるような関係だったら? もっとも親密な単位は何になるだろう? 一体、人と人とをつなぐものって何だろうか?
フェイスブックはインターネット上で友達を世界中につくるサービスである。そしてそれは今や欠かすことのできないもので、関係性をつくるひとつの道具として一般生活に普及している。つまりは、新しい握手の方法。そしてフェイスブックの調査結果は、現在人と人の隔たりは、6から大きく短縮し、3.5というものだった。3.5次の隔たり?
この結果は、人類が誕生して以来、世界中のあらゆる人たちと自分自身がもっとも簡単に関係を持てる時代であることを意味する。しかし、そんな数字とは逆に、孤独感も増していくのはなぜだろう? 極論を言ってしまうと、その答えは、距離感や仲間、つながり、そして家族といった言葉に対する定義の仕方にある。まるで繊維のように張り巡らされたソーシャルメディアは簡単に人と人を結びつける。しかし、ソーシャルメディアがそれらの意味を再定義できるかと言われると、そうはいかない。おそらく私たち人類が存在している間、仲間とは何か? 家族とは何か? といった問いに対する答えはどんどん変化していくだろう。握手はどうだろう? 本来、和解や平和などを意味する象徴だった握手だが、今や書類で契約を交わす代わりに握手をしたり、また「ハロー」や「グッバイ」といった挨拶の代わりに握手したり、さらに政治声明的な意味合いをも含むようになった。ときに握手はその必要性を見落とされ、そしてときにファーストコンタクトとして重宝される。そもそも握手という単純な行為がなぜこのようにして、さまざまな意味を持つようになったのだろう。
※PARTNERS Issue #1より抜粋した記事になります